巨人伝説と暗闇村の惨殺事件の謎

難易度『黒松 Pinus thunbergii』【叙述トリック有り】

 私が山村に到着したのは、夕暮れ時だった。
 闇に包まれた村は、それに負けない活気ある賑やかさに包まれていた。村長が私を出迎え、案内してくれた。村に入るにつれ、周囲はどんどん暗くなっていった。

「旅の探偵さん、よく来てくださいました。我が村には古くから伝わる伝説があるんです」と村長は語り始めた。
「巨人が山の向こうに住んでいるという噂でね。最近、我々の間でその噂が再燃しているんですよ」

 私は興味深く聞いていたが、そんなオカルト的な話を信じる気にはなれなかった。

 翌日、村を歩いていると、興奮した様子の村民たちが何かを運んでいるのに出くわした。

「神様からの恵みだ!」と周囲の村民らは叫んでいた。

 私は、さぞや大きな獲物でも見つけ、ジビエ料理で祝うのだろうと考えた。
 確かに、近づいてみると食欲を誘う良い香りが漂ってきた。村民たちはその『恵み』とやらで口を一杯にしながら、その『恵み』を村の食糧庫と運んでいった。

 私は異郷の食べ物に慣れずに調子が悪く、今は食欲がなかった。村民たちが『神様の恵み』に歓喜する中、私はそっと仮宿に戻った。

 明後日、村は異様な静けさに包まれていた。宿から外に出てみると、そこには言葉を失うほどの光景が広がっていた。

 村中の住民が、まるで眠るように倒れていたのだ。5000もの命が、ものの二日にして失われていた。

 私は必死に生存者を探したが、一切生きている者はいなかった。そして、一昨日の『神様の恵み』の食べ残しを見つけた時、気が付いてしまった。

 何者かが、村民に気づかれぬように食物に毒物を混入したのだ。しかし、一体なぜ?

 巨人の祟り。神様の祟り。それとも、誰かが企んだ毒殺事件? 村を巻き込んでの心中? 考えたくもない想像が、私の頭を駆け巡る。

 村を出る前、最後にもう一度周囲を見回した。遠方から鈍重な音が聞こえ、遠くの山の稜線に巨大な二本足の影のようなものが見えた気がしたが、私はすぐに目をそらした。
 それが何なのかを確かめる勇気は、私にはなかった。

 この事件の謎、アナタには分かりますか?


問題:毒物を混入した何者かの犯行方法と動機。巨人伝説の謎。そして村の真の姿の解明。

真実:村民は皆仲良し。裏切者など居る訳も無し。

真実:『私』は『神様の恵み』に直接接触していない。

真実:村民に賄賂や脅し等の心理的脅迫は絶対に通用しない。

真実:この物語に『人間の大きさをはるかに超える巨人』は存在しない。

真実:村民が食べ物でないもの、例えば食べ物に似せて作られた
『食べ物を含まない完全な別物』を食べ物だと誤認することはあり得ない。
ただし、毒物の混入は見破れないものとする。

真実:毒物を使用した犯人には確かな殺意があり動機が存在する。それを保証する。

追加真実1: この謎に関係する可能性のあるキャラクターは以下の通り。
『村民』・『村長』・『私』・『巨人』のみである。
故にこの中に必ず犯人が居る。
ただし、この役割には『村民』に『村長』を含めるなどの重複を許容するものとする。

追加真実2: 村民を殺した『毒物』は、故意に人為的に混入されている!!
この物語に信仰やカルトは関係しない。

追加真実3: 『私』はあらゆる意味において無実であり、犯人ではない!!
『私』は見間違えをしない!

追加真実4: 犯人は、『村民』を殲滅後、その場所を放置した。

ヒント5: 推理の鍵は以下の記述である。
『どんどん暗くなる闇に包まれた村』・『5000もの命』
『裏切者が居るはずのない村』・『心理的脅迫は絶対に通用しない村民』
『巨大な二本足の影』・『人間の大きさをはるかに超える巨人は存在しない』
【次のヒントは、ほぼ真相】

真相占い6: 犯人は人間……。
暗黒の村に住まう六本足の村民は……確実たる死への道に行列を作り……。
抗えぬ欲望の果てに無残な死体を晒すだろう……。

真相

私、村長、村民は蟻。舞台は蟻の巣。犯人は人間。犯行方法は毒餌。動機は害虫駆除。

戻る メール 次へ